SEP/2019
昨今、日本中ではやりの観光列車。
その中の1つであるいすみ鉄道のレストラン列車「レストラン・キハ」を体験してきました。
こうした観光列車で最も有名なのは「ななつ星」でしょう。
ななつ星の料金は高額としても知られており、3泊4日だと700,000円-1,000,000円ぐらいするらしいですね。
そんな料金にもかかわらず予約をとるのはたいへん困難だとか。
あほらしい...
そのお金でヨーロッパまで何回もビジネスで行けるじゃないか。
ついそう考えてしまいます。
だいたい豪華な車両といっても日本の JR には「狭軌」という致命的な欠点があるため、車内は必然的に狭くなりますから欧米のようなゆとりある個室は無理です。
高速運行と大量輸送にも不向きな狭軌を選択した明治政府は取り返しのつかない失策をしたと思っています。
「日本の観光列車なんかつまらない」
そう思っていたところ、いすみ鉄道の前社長だった鳥塚亮氏を知り、その鉄道や経営に対する考えに深く共感しました。
鳥塚氏が手がけられたものならばいいんじゃないだろうか。
大多喜駅に 11:00 に集合とのことなので、シナガワグースを 08:30 に出発する大多喜駅行きの小湊鐵道バスに乗り込みました。
小湊鐵道バスと京浜急行バスが、大多喜と品川・羽田空港との間を結んでいます。
品川から大多喜までの所要時間は01時間25分。
定刻(09:55)よりも少し早い 09:50 に到着しました。
レストラン・キハの受付時間(11:00-11:30)まで少し時間がありますので、町を散策することにしました。
「大多喜城」
大多喜は城下町としても知られています。
徳川家康の江戸入府時には、徳川四天王の1人である本多忠勝の所領(10万石)となりました。
その居城となった大多喜城をまずは見学に行きました。
天守閣は昭和50年に再建されたそうです。
「大多喜城下」
昔を偲ばせる建物もいくつか残っていました。
ただそれほど立派だとか見どころが多いとは思えませんでした。
「いすみ鉄道」
国鉄特定地方交通線だった木原線を引き継いだいすみ鉄道は、沿線自治体などが出資する第三セクターの鉄道です。
廃線寸前にまで追い込まれたこのローカルな鉄道を、一躍全国的に有名にしたのは前社長の鳥塚亮氏でした。
訓練費用自己負担の運転士養成プラン、旧国鉄形車両「キハ28・キハ52」の導入、レストラン列車の運行などのアイデアにより、いすみ鉄道を存続させることに成功します。
根っからの鉄道マニアとしても知られる鳥塚氏の鉄道や経営に関する考えや意見はとても面白く勉強になるのでブログなどをよく見ています。
僕も以前は「鉄」でしたが、今はもう日本の鉄道にあまり興味はありません。
それは鳥塚氏の指摘する「国鉄の DNA」ともいうべきサービスの低下や切捨てにより、鉄道の旅に魅力がなくなってしまったからです。
こうした国鉄の DNA は、最近の「台風が来たらすぐさま運行とりやめ」などにも通じているように思います。
そのことについても、鳥塚氏はすでに次のように手厳しく批判をされています。
今回の一斉運休は「何かあったら責任が取れません。」イコール「安全が確保できない」ともっともな理由をつけて、本来行うべき輸送業務を放棄したというのが実情でしょう。だとすれば鉄道会社の英断などと称賛されるような内容ではないということになります。
これらはなにも JR だけでなく、日系の航空会社にもこうした傾向が見られると常々感じています。
話が随分とそれてしまいました...
「急行2号」
乗車する列車「急行2号」が入線してきました。
土日祝のみ急行2往復が運行されます。
特急ではなく、この急行というのが「鉄」には堪らないのです。
「駅舎」
昭和感が漂っていて懐かしさがこみ上げてきます。
2両編成のうちの1両がレストラン列車となっています。
「指定席」
指定された座席へ。
4人掛けシートを1人で利用するという贅沢な仕様となっています。
広々としてこれはいいです。
「Menu」
地元のイタリアンレストラン「Pesce azzuro」が手がける地元産伊勢海老やアワビなどのシーフードを使ったフルコース料理が提供されます。
「栓抜き」
これも懐かしい。
ありましたよね、これ。
「ワイングラス」
3種類のグラスが用意されていて、揺れても大丈夫なように台が置かれています。
「パン」
ふと中吊り広告を見ると、上原謙と高峰三枝子のフルムーン夫婦グリーンパスの広告。
なんと旧国鉄時代のものではありませんか!
こうした細部へのこだわりが「鉄」の心をくすぐります。
「りんごジュース」
まずはりんごジュースが配られました。
「ウェルカムドリンク/スパークリングワイン」
次にウェルカムドリンクとして、スパークリングワインが注がれ、気分が高まります。
レストラン列車の料金には、こうしたドリンク代も含まれています。
※一部のドリンクを除きます
いろいろ興奮しているうちに列車は大多喜駅を発車。
「前菜/手作りピクルスとオリーブ」
「白ワイン/Takún Reserva Chardonnay(CL)」
サービスされるワインは AA で提供されていたワインだそうで、前社長の鳥塚氏によるチョイスだとか。
外資系航空会社で勤務されていた鳥塚氏らしさが出ています。
「ミネラルウォーター」
炭酸ありと炭酸なしを選ぶことができます。
車窓にはのどかな景色が流れていきます。
ワインを飲みながら眺めていると、なんとも楽しい気分になります。
「前菜/季節の前菜3品盛合せ」
サザエ、タコ、エビのシーフード3品と野菜。
房総を感じられていいです。
「スープ/地魚と魚介のスープ」
大原産のふぐの入ったスープ。
これもおいしかったです。
撮り鉄の方たちがたくさんシャッターチャンスを狙っているのが見えます。
「鉄」には撮り鉄と乗り鉄がありますけれども、僕は子供のときからの乗り鉄です。
飛行機もそう。
見るだけなんてつまらないです。
「赤ワイン/Takún Reserva Cabernet Sauvignon(CL)」
前菜を終える頃、赤ワインもすすめられます。
もちろんいただくことにしましょう。
「プリモピアット/大原産アワビとイクラの冷製スパゲッティーニ」
列車内では火を使うことができないので、ひと工夫されているようです。
暑い時期なので冷製パスタという方法もありなのでしょうけど、やはり麺料理は茹でてから時間がたってしまうと、どうしても食感は落ちてしまいます。
「セコンドピアット/大原産伊勢海老の香草オイル焼き ピッツェリアソース」
こちらの料理も工夫はされているのでしょうけど、あまり素材の良さが伝わってこなかったです。
「デザート/自家製チーズケーキとジェラートの盛合せ」
デザートまで食べるとおなかが苦しくなるほどでした。
「コーヒー/イタリアン深煎りコーヒー」
砂糖は有機シュガーとのことですが、コーヒーフレッシュというのはちょっとありえないですね。
ブラックで飲むからいいですけど、いかにも日本という感じでした。
「お土産」
お土産をいただきました。
名物のキハカレーもあり、家で食べようと思っていたのですが、酔っぱらっていたせいか持ち帰るのを忘れてしまいました。
とても残念…
「上総中野駅」
小湊鉄道との乗換駅に到着。
ここで折り返しをして出発駅の大多喜へ向かいます。
いすみ鉄道は全線26.8kmしかありませんので、こうして2回折り返し運転を行うことにより食事と沿線風景を楽しむことができる時間を確保しています。
大多喜駅に到着したのは、定刻どおりの 14:22 でした。
11:50 に出発をしましたので、約02時間30分の旅でした。
「なにもないがここにある」
いすみ鉄道のキャッチフレーズだそうです。
いいえ、なにもないことはありません。
ここだけの魅力にふれることができました。
どこにだってその土地ならではの魅力があるはず。
それに気づくことができるのか、掘り起こすことができるのか、そしてそれを魅力あるものとして発信できるのか。
そうしたことの大事さを教えてくれたいすみ鉄道なのでした。
最後に鳥塚亮氏のブログの中で大好きな記事をご紹介します。
チャイナエアラインの搭乗記です。